街を自分のものに


 電車に揺られて、県庁所在地の駅まで出てきた。不妊治療の病院に行くためで、先月までは別の病院だったのだけど、先生がネガティヴなことを言うのですっかり元気がなくなってしまって、セカンドオピニオン、と思って、病院を変えたのだ。新しい病院の先生は、前向きな言葉をくれて、それで私はだいぶ元気を取り戻した。日常生活においても、細々としたことを頑張ろうと思えるようになった。元気がない時は、何にもやる気が起きなかった。それは単なる自分のなまけ病かと思っていたけど、すこし元気になってみて、自分がそんなにも落ち込んでいたんだ、ということに気づいた。状況は特に変わっていないのに、先生の言葉ひとつで、気持ちは大きく揺れ動く。

 今日は卵管造影検査というものをして、ネットを見ると結構痛いと出ていたので、不安だったけど、思ったよりも大丈夫だったのでほっとした。大きな問題もなさそうだった。夫の精索静脈瘤の手術が意外に早くできることになって、来月の頭を予定している。少しずつ、状況が良くなっていきますように。

 検査と診察を終えて、ひとりでお昼を食べて、街をぶらぶらする。いくつかの駅ビルをまわってみる。この街は都会だ。東京で買い物する時にいつも行く服のお店もちゃんとあって、いつもの感じだ、とほっとする。あーあ、ほんとうに、私は心の底から買い物が好きだ。買い物というか、心のときめく物を見てまわるのが好きだ。いい感じの服、いい感じのアクセサリー、いい感じの雑貨、いい感じの本、エトセトラ。そういうのを、自分の足で、見てまわって、そうすると、心が栄養を取りこんだみたいに、むくむくと膨らんでいく。最近はネット通販ばかりで、私はネット上でいい感じのものを探してまわるのも大好きなのだけど、やっぱり、自分の足で、現実のものを見てまわるほうが、圧倒的に心の栄養になる、と思った。

 前通っていた病院は、病院のまわりに何もなくて、晩ごはんの買い物をすませることすらできなかった。診察のあとは、いつもとぼとぼと、駅までの道のりを歩いた。でも、今の病院のまわりには色々なお店がある。落ち込んでいても、街をぶらぶらして、すてきなものを見てまわれば、元気を取り戻すことができる。こういうのって、結構大事だなあと思った。ロケーション。

 そして、私はものすごい方向音痴なので、新しい街に行く時はいつもドキドキする。適当に歩いて、目的地にちゃんと着いたためしがない。今日だって、今の病院に行くのは3回めだけど、いつもの道が工事中だったから、違う道を通ってみたら、迷った。予約した時間に遅れてしまった。この街に来る時は大抵夫と一緒だったから、今までは道を全然把握していなかったけど、今日、ひとりでぶらぶらしてみて、この街をすこしだけ自分のものにできたから、よかった。これからはひとりで来ても、楽しめるね。

 記念すべき100エントリ目でした。わーい。