欲しがる前に、与えられたもの


今週のお題特別編「子供の頃に欲しかったもの」
〈春のブログキャンペーン 第3週〉


チュチュ、というのかな。

幼稚園の頃、友達の家に遊びに行って、その子はバレエを習っている子で、頭の高い位置できゅっとお団子にして、あのバレエの、スカートのレースがふわふわに広がっているような服を着ているのを、見せてもらったことがあったのだ。

かわいいな。
私もあれを着たいな。

そう思ったことを、鮮明に覚えている。

たぶんそれを言葉にして親にも伝えたけれど、私はバレエを習わせてもらうことはできなかった。


でも私はヤマハでエレクトーンを習っていた。
気がついたら。

小学校になったら、結構ちゃんとしたピアノ教室にも通わせてもらった。
気がついたら。

塾にも通って、受験もさせてもらった。
気がついたら。


それらは欲しがる前に、気がついたら、与えられていた。

でも、ほんとうに欲しかったのかどうかは、わからない。
意思確認くらいはされたのだろうけど、よく覚えていない。


私は物心がついたのがたぶん遅くて、あまり小さい頃の記憶がない。

その頃の自分は何を考えていたんだろう。
欲しかったものは、なんだっけ。

ぱっと思い浮かんだのは、あの時のチュチュ くらいだった。


なのに、どうしてか、色んなものを手にしていた。

それはとてもありがたいことなのだろう。
親には感謝している。


だけど何でか、少し悲しくなってしまった。

欲しがる前に、価値もわからずに、与えられていたということ。