欲求

 
夫の肩を力強くもんでいて、オラオラオラオラ…と言っていたら、なんだかジョジョっぽい気分になってきて、ドラララララ…と言ってみたりして、それから、アリアリアリアリ…と言いたい気持ちがわいてきたけど、夫はジョジョをそんなに読んでない気がしたので(その話題を出すのを聞いたことがない)、オラオラとかドララとかは一般的なかけ声としてまだありな感じがするけど、アリアリはちょっと意味不明で相手を困惑させてしまう可能性があると思って、自分の欲求を頑張っておさえた。
 
私にはひとつ上の兄がいて、ジャンプとかドラクエとか格ゲーとか、90年代を生きた男子的な話題は、わりとおさえているほうだと思う。
 
私はその昔、続き物のマンガを読み始めたりRPGをやり始めたりすると、その続きが気になって、がまんできなくて、夏休みだったら徹夜とかしてマンガを読み続けたりゲームをやり続けたりしてしまうタイプのアホの子だった。
そんな私の性質に目をつけた兄は、ある年の夏休みの夜、私がさあ寝るぞという時間に、何十巻とある長編マンガをどさっと私に押し付けてくるという嫌がらせを始めた。
それが嫌がらせだとわかっていても、私は物語を消化したい欲求をおさえきれなくて、まんまと兄の策略にのり、マンガに手を伸ばしてしまうのだった。
連日、朝方までマンガを読み、当然、生活は逆転。
午後になって起き出して、またやっちゃったよーと自己嫌悪に陥っている私を見て、兄は満足そうにしていた。
 
生活が逆転するとそれを戻すのが大変で結構辛いので、当時の兄の仕打ちはムカつくけど、まあ、マンガをたくさん読めたのは良かったと思う。
 
ただ残念なことに私は記憶力が悪いので、当時読んだマンガのストーリーの細かい部分はほとんど忘れてしまった。
 
でもそういったマンガのエッセンス的な部分がふと日常のなかで思い出されて、今日みたいにアリアリ言いたくなったりすることも、たまにあるのだった。