君はすっとこどっこい


 昨日は仕事で、疲れる電話をとってしまった。ぐったりとした気持ちを引きずったまま、お昼休みに突入。そこで、朝コンビニでお昼用におにぎりとカップの春雨スープを買ってきたのに、出社したらそれをすっかり忘れて仕出し弁当を注文してしまったことに気づいて絶望する。

 なんでだ。なんで忘れたんだ私。そういえばコンビニを出た後にイヤホンで椎名林檎ちゃんの「ありあまる富」という曲を聴いて、なんていい曲なんだろう…とじーんとしたりしていて、そんな風に陶酔しているうちに、ちょっと前の自分の行為をすっかりと忘れてしまったのかもしれない。私にはそういうところがある。

 なんかもう踏んだり蹴ったりだよ、と、手荷物が入っている手提げにコンビニ袋を隠し持ったまま、大しておいしくもないお弁当をもそもそと食べた。お昼は一緒のチームの人たち5、6人でひとつの机を囲んで食べる。午前中に受けた電話の話をしたら、そういうに時はこういう対応をするといいよ、みたいなアドバイスをもらって、気持ちがちょっとすっきりした。

 そのくらいのすっきり感で満足しておけばよかったのだけど、私はさらなるすっきり感を求めて、隣に座っていた人に、コンビニでお昼を買ったのに、お弁当まで注文してしまったことを打ち明けた。ほら、自分がうっかりやらかしたことって、人に言いたくなるじゃないですか。それで笑ってもらえたりすると、なんとなくすっきりするじゃないですか。あはは、そういうこともありますよねーって。

 でもその人は、「えっ。私はさすがにないですね、それは。疲れてたんですか?」との切り返し。ガーン。そしておもむろに、「◯◯さんって、天然ですか?」と聞かれる。天然ですか?!正面きってそう聞かれて、私は一体なんと答えればいいのか。

 確かに今までに天然だねと言われたことはある。でも私はそう言われるといつも複雑な気持ちになった。天然という言葉は一般的にはドジっ子みたいなかわいらしいニュアンスが感じられて、なんか自分の実態と乖離しているように思えた。そういう余分なニュアンスは、いらないんだ。おっちょこちょい、うっかり、そんな言葉でもまだ生易しい。

 そんな風に思っていたある日、大学のサークルの後輩から、「◯◯さんは、天然とか、おっちょこちょいっていうより、すっとこどっこいって感じですね!」と言われて、失礼な、と思いつつも、私はその表現がいたく気に入ったのだった。そう、そう、そんな感じ!すっとこどっこい!!

 以来、誰かから天然ですねと言われた時は、天然っていうより、すっとこどっこいって感じです、などと返したりして、余分なニュアンスを排除、ひょうきん風なテイストをまぶしてきたのだ。でも、今の職場でいきなり、「天然っていうより、すっとこどっこいです!」なんて自称するような下地というか、そういうことを話しそうな人みたいな空気感は、まだ作れていない。いきなりそんなこと言うの、はずかしい。それで結局、ハハハ…うーん…みたいに、困った笑いをうかべることしかできないのであった。はぁ。


 ところで、今回のブログを書くにあたって、すっとこどっこいの意味を調べてみたら、

すっとこどっこいとは元は馬鹿囃子の囃子言葉で、相手を侮蔑して罵る言葉である。馬鹿野郎の類いで、同様に目下の者がミスしたときに使用することが多い。すっとこどっこいの語源は諸説あるが、『すっとこ』と『どっこい』の組み合わせという点は共通している。『すっとこ』は「裸体」、『どっこい』は「どこへ」の意で、裸同然の格好でうろつく者を罵ったところからきたという説などがある。

とあり、思いのほかきつかった。めっちゃ蔑称だし。裸同然て…。


 そして今日のブログのタイトルは、「君は天然色」という大瀧詠一さんの曲を意識しています。そんな素敵な曲に歌われるような女の子に、なりたかった。



大瀧 詠一 (Eiichi Ohtaki) - 君は天然色 (Kimiwa Tennenshoku ...