おたまちゃん
夫が最近、「濃い」「うすい」「多い」「少ない」みたいな言葉に敏感になってて、かわいい。
例えば、今年初めて梅の実を買って梅シロップを作ったのだけど、炭酸水で割って梅ソーダを作ったら、ちょっと濃くなってしまった。
それで私が、
「シロップ、ちょっと濃かったね。」
などと言うと、
「このシロップはこんなに濃いのに…俺は…」
みたいに言い出すのだ。
欲しがるねえ〜。
最近は夫のことを「おたまちゃん」呼ばわりしている。
(おたまじゃくしの「おたま」)
笑える時に、笑っておくんだ。
楽しんでしまうんだ。
クリニックで男性不妊的なことが発覚した日、私はかねてからの予定で午後から友達との旅行に出かけた。
友達と取るに足らないことを話していると気が紛れるけど、ふと、自分の思い描いていた未来は、当たり前に手に入るものではなかったんだな、なんて考えて、涙がこぼれそうになる。
誰かに言いたい、けど、そんなことを言ったら、きっと気を遣わせてしまう。
でも、もし、このタイミングで、「◯◯は子どもはまだ?」なんて聞かれたら、きっと言ってしまう。そして、泣いてしまうだろう。
次の日、旅行からの帰り道は雨が降っていて、夫が駅まで車で迎えに来てくれた。
ただ温泉に入っておいしいものを食べてだらけていただけなのに、私は何だか疲れきってしまっていて、そうしたら夫はやけに甲斐甲斐しく、晩ごはんにカレーを作ってくれた。お皿洗いまでしてくれた。
「自分にできることはこれくらいだから…」
なんて自虐してみせる夫は、昨日の今日でその事実を乗り越えられているわけもなく、なんだか痛々しくて、悲しかった。
(今はもう自虐が板についている。ハートの強い子!)
傷ついた夫をひとり残して旅行に行ったことを、申し訳なく感じた。
色んなことがある。
でも私はこの人と生きてく。
この人と結婚したことを後悔していない。
いつか不妊治療がうまくいかなくて、辛い局面が来た時に、心の余裕がなくなって、夫のことを責めてしまうことがあるかもしれない。
私は小さい人間なので。
先に謝っておいた。
ごめんね。
宇多田ヒカルちゃんの赤ちゃんが産まれて、おめでたい。
大島さんの赤ちゃんだって、無事に産まれてほんとうによかった。
すべての誕生はすばらしくて、とってもすてきなことだ。
久しぶりに「The Flavor of Life」を聴いていて、その歌詞が、深く深く心に沁みてしまう。
ありがとう、と君に言われると
なんだかせつない
どうしたの?と急に聞かれると
ううん、なんでもない
信じたいと願えば願うほど
なんだかせつない
他人同士が、真面目に関係を築いていこうとして、めんどうくさいコミュニケーションを日々積み重ねていると、こういう複雑な心の機微が生まれる。
色んなことがある。
でもそれが、せつなくて、味わい深い、人生。
ダイヤモンドよりもやわらかくて
あたたかな未来 手にしたいよ
限りある時間を 君と過ごしたい